こんにちは。
久しぶりに解説記事を更新します。
今回のテーマはタイトルの通り
バイオリニストが悩みがちな「マイク」についての記事になります。
(2020.11.05 追記 YouTubeチャンネル「5cc music」にて補足解説動画を投稿始めました。)
ポップスやロック、ジャズやブルース、カントリー等々・・・
最近はいろんなジャンルでバイオリニストが加わる機会が増えてきました。
そんなバイオリニストたちについてまわるのが「音量、音圧問題」です。

バイオリニストとしていざバンドに加わって演奏したとき、
「あれ、私の音量小さすぎ・・・???」
と感じたことはありませんか?
自分で弾いていても周りの音に埋もれてしまって自分の音が聞こえない。
周りからもバイオリンが聞こえないよと言われてしまう。
クラシックの場合はホールでの演奏が多いためバイオリンの生音は響き渡って大きく聞こえますが、バンド演奏をするライブハウスなどではそもそも周りの建物などに気遣って吸音されていることが多いです。
そのような環境で生音で戦おうとしても非常に無力です。
そんな時、バイオリニストにもマイクの使用が求められてきます。
スタンドマイクが目の前に置かれ、これで私も大丈夫、さあ弾いてみよう。
ギギィーー
ヒュンヒュン、ゴー
キィーーーーーーーーーン
ひどい音やノイズまみれで演奏どころじゃない・・・。
ちょっとPAさんへたくそなんじゃないの??
そんな悪夢のような状況の時、PAさんは必死に頑張ってくれているのです。
実は原因はバイオリニスト側にあることが多々あります。
マイクも一つの立派な楽器です。
マイクを用いるのであれば、バイオリニストもマイクの正しい使い方を知っておく必要があります。
この記事では主にバイオリニストに向けたマイクに関する話を書いていきます。
★音が出るまでの経路

マイクに関する基本的な話になりますので読み飛ばしていただいてもかまいません。
マイクの音が小さい、大きい、あるいは出ないなど
マイクを使用すると様々なトラブルが起こりえます。
まず基本知識として、マイクは音を拾う(入力する)装置です。
そもそもマイクがバイオリンの音をうまく拾っていないと音は当然小さくなります。
そして対になるものとして音を出すスピーカー(出力する)装置が存在します。
いくらマイクに音を入れてもスピーカーにうまくつながっていなければ音は鳴りません。
その接続の中継点としてミキサー(音量などを調節する装置)を挟むことが多いです。
卓とも呼ばれます。
出音を聞きながらこの卓で音量バランスや音質調整をしてくれているのがPAさんです。
シンプルにまとめると
マイク(入力)⇒ミキサー(調節)⇒スピーカー(出力)
これらをケーブルや各種機器などで順番につないでいます。
★マイクの特性
ではバイオリニストはどのようなマイクをどのように使えばいいのでしょうか。
この項目では各種マイクについて解説していきます。
現場でバイオリニストが「マイクをお借りできますか?」とたずねると
大抵先ほどの画像のようなスタンドとマイクをお借りすることになると思います。
先っぽが球状になっている、マイクと言われて真っ先にイメージする形のものですね。
ポピュラーなのですが、バイオリニストにとっては一番扱いが難しいと思います。
というのも、この形のマイクは本来ボーカル向けに作られていることが多く、
バイオリンのような高音域の楽器の音を拾うのにはあまりオススメしません。
マイクには音を拾いやすい方向(指向性)がマイクごとに決まっているのですが、
球状のものは無指向性である場合がほとんどで、周辺の音をすべて拾ってしまいます。
ゆえに入力を大きくするとバイオリンのみでなく周りの楽器の音まで余計に拾ってしまい、
結局バイオリンの音が聞こえないという状況になりがちです。
そのためマイクを使うバイオリニストは、単一指向性(一方向の音を集中的に拾う)のマイクを買って持ち込む方が安心です。
また、マイクにはダイナミックタイプのマイクとコンデンサータイプのマイクがあります。
ダイマミックマイクは通常使用されるようなマイク
コンデンサーマイクはマイクに単独の電源(ファンタム電源)を供給し使用するマイクです。
コンデンサーマイクのほうがより繊細な音を拾うことができます。
その分ダイナミックマイクよりも丁寧に扱わないと故障する可能性が高まります。
●スタンド式?クリップ式?
前述のようなスタンドマイクを使用する場合には、バイオリンの音をしっかりとマイクに拾ってもらわなくてはなりません。
よってかなりマイクに近接した状態で演奏することになります。
思っている以上にマイクに近づかないと貧弱な音になってしまいます。
スタンドを伸ばしてバイオリンの上からマイクをあてる形が自然です。
バイオリンのどの位置にマイキングするかによっても音色が激変します。
ふくよかな音色を目指す場合はボディから少し離し、
よりアタックや擦弦感を出したい場合はブリッジ寄りにすると良いです。
f字孔にマイクを近づけすぎるとうわんうわんとハウリングする危険性が高いです。
またマイクの対面にスピーカーがあると無限にハウリングを起こすので置く位置に注意が必要です。
スタンド式マイクでは常にマイクの位置を意識しながら弾かねばならず、ストレスを感じるかもしれません。
弾きながらいろんな場所に行ったり来たりしたい人には不向きです。
そんな方にはクリップマイクをオススメします。

クリップマイクはバイオリン本体に取り外しできるマイクです。
写真はaudio-technicaのatm35。
こちらのクリップは顎当てに挟むタイプですね。
メーカーによってはボディーに直接取りつけるようなものもあります。
クリップマイクの利点はバイオリンとマイクごと移動できることです。
常にマイクの位置を固定しておけるためストレスなく移動できます。
またマイク自体も超単一指向性、コンデンサー仕様のものが多く、周囲の音に大きく作用されることなく使用できます。
音質も大変優れています。
それでも隣にドラマーや振動する低音楽器がいるとハウリングする危険性はありますが、
みずから避難もできるためスタンドマイクより安全です。
●ピエゾピックアップマイク
もう一種類のマイクを紹介します。
駒に取りつけて振動を拾い増幅するピエゾピックアップマイクです。


こちらは駒の溝に先端の金属板を挟み込み使用するタイプのものです。
最近は駒そのものに内蔵されているものもあります。
ピエゾピックアップはハウリングにはめっぽう強く、ほとんど周囲の影響を受けません。
どのような環境でも同じ音色を出すことができます。
その反面、スタンドやクリップマイクなどと比べると音が細くなる傾向にあります。
また駒を削ったり交換したり事前のバイオリンカスタマイズが必要です。
★まとめ
マイクを使うバイオリニストにとってはマイク選びから音作りが始まります。
せっかくバイオリンの技術はうまいのにマイクの使い方を知らないためにひどい音になってしまう場合も多々あります。
PAの方も最善の手を尽くしてくれると思いますが当然限界があります。
バイオリニストがどのような音を出したいのかイメージを伝えられなくては齟齬が生じてしまいます。
マイキングの練習を自分ですることも重要になると思います。
次回はどこでも自分で理想の音を出すために準備したほうがいいことの解説記事を書く予定です。
マイキングで必要なEQの知識についても触れていきます。
コメントをお書きください
加藤 修 (日曜日, 06 9月 2020 15:49)
知りたかった事なので非常に参考になりました。
マイクで拾った音を自分で聴きながら演奏するにはどうすれば
良いのでしょうか、イヤホン等の使い方を説明していただけるとたすかります。
次回以降期待しています。
佐治 拓人 (日曜日, 06 9月 2020 20:24)
ご覧いただきありがとうございます!
自分の音をモニターする方法についてのご質問でよろしいでしょうか?
近日中に続きの記事を作成致します!
佐治 拓人 (金曜日, 06 11月 2020 21:01)
YouTubeチャンネルにてモニターの仕方を含めた解説動画を投稿しました。
https://youtu.be/JfU3jtoQox8
よろしければご覧ください。