久しぶりに機材についての記事を更新します。
今回はEmpress Effectsより、
『ZOIA』
こちらを改めて紹介します。

ネットで探しても紹介している記事が少ないので、もし気になっている方の参考になればいいなと思います。
1年使ってようやくこのガジェットについての理解度がある程度説明できるところまで上がりましたので、記事を書こうと思い立ってからずいぶん遅くなりました。
ではご覧ください。
(2021.02.11 追記)
自作パッチファイルを追加しました。。
ZOIAをお持ちの方はご自由にダウンロードしてお使いください。
改変していただいてもかまいません。
直接こちらのパッチを販売することのみ禁止とさせていただきます。
★ZOIAって何するものなの?
まず最初にこちらの疑問ですね。
日本でZOIAを販売しているUmbrella Companyの製品紹介ページでは、
音のアイデアを描くためのオープンキャンバス。
モジュラー・ペダル・システム。
ZOIAはペダルのかたちをしたフル機能のモジュラーシステムです。
音のアイデアを描くためのオープンキャンバスに、様々なモジュールを配置し、それらを接続していくことで、フル機能の「バーチャルペダルボード」や「モジュラーシンセサイザー」を自由に構築することが可能です。
ZOIAの無限の可能性は、あなたのイマジネーションによって解き放たれます
と書かれています。
以下ZOIAでできることを簡潔にまとめてみます。
①ディストーション、ディレイ、リバーブなど各種エフェクターの作成、連結
②シンセサイザーの作成
③MIDIコントローラーの作成
④簡易ルーパーの作成
⑤これらの要素の連結
・・・など
できることが無数にあり書ききれないほどです。
★通常のマルチエフェクターとの違いについて。
ディストーション、ディレイ、リバーブなど各種エフェクターの作成、連結
「つまりはマルチエフェクターってことね。」
この文章だけ見ると、そう思うかもしれません。
ですが、ほかのマルチエフェクターとの大きな違いでありZOIA最大の魅力は、
エフェクトを1から自由に作成できる点
であると感じました。
僕もこの機能を見て衝動買いした人間です。
通常マルチエフェクターは内部に単体として完成されたエフェクターが複数入っており、それらを連結、組み合わせていくことになります。
それらの各種パラメーターを調整することで音色を作っていきます。
一方ZOIAは「バーチャルモジュラーシステム」を搭載しています。
モジュラーシンセをご存じの方はまさしくそのイメージに近いです。
公式では「レゴブロックの様なもの」とたとえられています。
ZOIAでは、エフェクターを作り上げるためのモジュール(機能)が別個になっています。
音が入るためのインプット、出ていくアウトプット、ディストーションやディレイなどのエフェクト機能・・・すべてバラバラになっています。
レゴで例えるならば、広い家を作ろうとすると
通常のマルチエフェクターは「木が並んでいる庭」とか、「浴槽がついたお風呂場」とか、ある程度ブロックがまとまっている状態のものがいくつもあって、それらを組み合わせていく形です。
対してZOIAは、「木」あるいはもっと言うと「枝と葉っぱ」とか、「シャワー」「浴槽」のように、一つの部屋を作るためのパーツが別になっていて、それらを一つ一つ組み合わせながらより自由な形の家を作ることができます。
こちらが実際にZOIAでエフェクターの作成している公式動画です。
各モジュールを並べていって、それらをパッチング(接続)していくことで形ができていきます。
「一つ一つ作るのめんどくさっ!」という方もいらっしゃるかもしれません。
確かにこのような回路を作るためには各モジュールの使い方、つなげ方を理解していく必要があります。
僕も回路やモジュラーの知識がほぼないところから触り始めて、ちゃんとした形のものを作成できるようになるまで半年くらいかかりました。
そんな方のために、世界各国のZOIAマスターの方々がすでに完成させたユーザープリセットを無償で提供してくれている公式サイトもあります。
つまり自分で作らなくてもそれらのプリセットをダウンロード、SDカードを経由して自分のZOIAに読み込ませるだけで全く同じエフェクター等を使うことができるわけです。
購入した時の初期プリセットだけでもとても面白いものが入っていました。
ある程度慣れてくると、
「あのエフェクター新しく買わなくてもZOIAで作れるんじゃないか?」
という発想が生まれてきます。それだけ作成の自由度が高い機材です。
自分でエフェクター開発するのが楽しくてすっかりハマっています。
3つついているストンプスイッチなんかも自由に接続先や挙動を設定することができるので、アイデア次第で自分だけのオリジナルデザインのエフェクター開発も可能です。
結果的に節約につながってくる・・・かも?
あと、よくあるマルチエフェクターと比べて良いなと思ったところが、
エフェクト同士を並列で接続できる点です。
基本的にマルチエフェクターは複数のエフェクトを並べて直列でつなぐことが多いです。
インプット➯EQ➯ディレイ➯リバーブ➯・・・➯アウトプット
のような形ですね。
これが普通なのですが、たとえば「ディレイで出る音のほうにだけEQかけたいな・・・」みたいな詳細な調整がしたい時できないこともあったりします。
上の図でディレイの後にEQをかけると、ディレイがかかっていない原音にも適用されてしまうためです。
これが、並列接続ができると
インプット➯EQ➯ディレイ➯リバーブ➯・・・➯アウトプット
⇩ ⇧
EQ ➯・・・・ ➯
といったような形のルーティングができます。
これができることによって作成できるエフェクトのアイデアが飛躍的に増すことがわかりました。
主要エフェクトはだいたい搭載されています。
音も高音質なので使い勝手が良いです。
強いて言うとオクターバーがありませんでした。ピッチシフターはありますが、オクターバーのイメージで使おうとするとちょっと音が変質します。
一年間使った感想としては、
まだあまりエフェクターを知らなくて即戦力で使えるマルチエフェクターが欲しい!という方よりも
ある程度エフェクターもわかってきたし痒い所に手が届くエフェクターをじっくり考えたい、作りたい!
という方に向いているかなと思いました。
先ほどのUmbrella Campany公式YouTubeチャンネルで公開されている「ZOIA大学」というタイトルの動画で作り方の解説もありますし、「ZOIA駆け込み寺」という中の人が作り方の悩みなどの相談に応えてくれるフォームに疑問を投げかけたら、やさしく熱量のこもったアツいご回答をいただけたりもしたので、買ったはいいけど使い方が全く分からなくて・・・ということにはならないんじゃないかと思っています。
★シンセサイザーも作れてしまう魔法の箱
僕が購入に至ったポイントの一つはこれでした。
このコンパクトサイズながらシンセサイザーの音を出すことができます。
sine,square,triangle,sawtoothの波形、つまり音を出すことができる基本的なオシレーターやVCA、フィルターやADSR(エンベロープ)などシンセサイザーを作成するのに十分なモジュールが搭載されています。
僕はシンセはもともとあまり詳しくかったのですが、ZOIAでいろいろ覚えることができました。
CV(コントロールボルテージ)を駆使してスイッチを作ったり各種パラメータをコントロールできます。
この動画のように、直接ZOIAにキーボードで音を配置してZOIAだけで演奏することもできます。
また、MIDI in / out も搭載しているのでMIDIキーボードなど外部MIDI機器からZOIAを音源として使用することも可能です。
以下の動画も僕のオリジナルパッチです。
シンセの音が好きだけど鍵盤を扱うことが苦手なバイオリニストですので、バイオリンなど外部オーディオの音や強弱などに追従するピッチトラッキングシンセを作ってみました。
どちらもモノフォニック(単音対応)ですが、ポリフォニック(和音など複数発声対応)のシンセサイザーも作成できます。
シーケンサーも搭載しているので自動演奏でアルペジオ出してみたり、ドローンサウンドを作ってみたり可能性は幅広いです。
(2021.02.11 追記)
パッチファイルを置いておきます。
ZOIAをお持ちの方はご自由にお使いください。
改変していただいてもかまいません。
直接こちらのパッチを販売することのみ禁止とさせていただきます。
どこか哀愁漂う感じの自作ノイズジェネレーター。
(2021.02.11 追記)
パッチファイルを置いておきます。
ZOIAをお持ちの方はご自由にお使いください。
改変していただいてもかまいません。
直接こちらのパッチを販売することのみ禁止とさせていただきます。
こちらに関しては一年間使ってみて
非常に満足しています。このかばんに入るサイズで持ち運べるシンセと考えても便利です。
エフェクターなどとの組み合わせによってさまざまな音を出すことができます。
難点はモジュラーなのでシンセを作ろうと思った際に、シンセと呼べる形に組み立てるまでの作業が毎回必要というところですね。
骨組みだけ作ったものをプリセット登録しておけば解決するので不満なほどでもないです。
★お手軽MIDIコントローラーとして
前述のとおりZOIAでMIDIを送受信できます。
MIDI対応外部エフェクターのプリセット変更なんかに用いることができます。
あるいはZOIAから外部シンセをコントロールしてみたり。
MIDIフットコントローラーってけっこうごつくて大きいものが多いのでZOIAサイズでできると結構便利です。
ストンプスイッチは3つですが、回路の組み方によって3つのスイッチから複数のMIDIを送信することもできます。
去年から配信をする方も増えてきていて、配信用ソフトとしてOBSを使ったりしている方も多いのではないでしょうか。
OBSは外部プラグインでMIDI入力に対応することができるようになるので、たとえば複数シーンの切り替えや音声のミュートをMIDIコントローラーで操作できます。
フットコントローラーでできると演奏中両手がふさがりながらでも切り替えできるのでかなり楽になります。
試しにZOIAで複数カメラシーンの切り替えをテストしたところうまくいきました。
エフェクターやシンセとして使っていない時でも役割があるのは持て余すことがなくてうれしいです。
万能な魔法の箱。
★簡易ルーパーとしても使える
さらにルーパー機能も搭載しており、最大32秒までのステレオ録音、再生が可能です。
ワンショット、ループ、リバース、スタートエンドポジションなどの設定もできます。
複数のルーパーを並べて使用することもできます。
注意点としては、
・アンドゥ、リドゥ機能はなし
・複数ルーパーのsync(同期機能)はなし
・録音➯オーバーダブ(重ね録り)➯再生➯オーバーダブ➯再生➯・・・の順番に固定。
といったところです。
BOSS RC-300のようなマルチトラックルーパー的使い方はZOIA駆け込み寺の住職さんに聞いたところでも難しそうでした。
最近周りのジャズバイオリニスト界隈でもルーパーが流行っていたので参考になれば幸いです。
短いフレーズを再生したり簡易的なルーパーとしては使えますが、長時間録音ほか使い勝手の良い本格的なルーパーとしては及ばなさそうですので、専用機が良いと思います。
★組み合わせ次第で可能性は無限大
これらのような機能を組み合わせることによって、自分だけのユニークな装置を作ることができます。
見た目のピコピコ感もガジェット好きとしてもたまりません。
価格は65,000円前後と安くはありませんが、価格以上のポテンシャルを秘めている機材だと感じています。
また、発売後も不定期的にファームウェアアップデートが繰り返されており、モジュールが追加されたり使いやすさが向上したりとまだまだ進化を続けています。
通常のエフェクターではできないような音や仕組みを作ってみたい方やモジュラーシンセに挑戦してみたかったけど高額すぎる故に出なかった方に特におすすめです。
僕もまだまだわからないことが多いので、学びながら使い続けていこうと思います!
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
コメントをお書きください
ギタリスト (水曜日, 10 2月 2021 23:22)
おもしろく読ませていただきました!
記事後半で紹介しているシンセとノイズのパッチですが、どこかにパッチファイルを公開していただくことなどできないでしょうか…?
私も同じものを使ってみたいと思いました!
よろしくお願いします!
佐治拓人 (木曜日, 11 2月 2021 20:17)
お読みいただきありがとうございます!
動画下部よりダウンロードができるようにしておきました。
自分で使うくらいにしか考えていなかったので作りが雑な部分がありますがご了承ください。
フィードバックなど頂けると嬉しいです。
ギタリスト (木曜日, 11 2月 2021 20:50)
まさかご対応いただけると思いませんでした…!
ありがとうございます!!
まだまだzoia初心者なので、有益なフィードバックができるかわかりませんが、ありがたく活用させていただきます!
佐治拓人 (木曜日, 11 2月 2021 22:00)
日本のZOIAユーザーが少ないので情報があまり見つからないですよね。
僕もまだまだわからないことばかりですが、もし何かお力になれるようなことがございましたらお気軽にお尋ねください!
数少ないZOIAユーザー同士で情報を共有できればと思います。
zoian (金曜日, 16 4月 2021 23:56)
初めまして。ギターでzoiaを使用しています。バイオリン演奏のところでポリフォニックも作成できると記載がありましたが、これはバイオリンやギターでコード弾きに対応しているということでしょうか?SY-1000のようなギターシンセにできるのかなーと疑問に思いコメントさせて頂きました。宜しくお願い致します。
佐治拓人 (土曜日, 17 4月 2021 14:20)
zoianさんはじめまして。
今回作成したパッチではピッチ解析を使用しオシレーターのピッチを同期しているため、厳密にポリフォニックにするためには各弦のおおよその使用音域を設定して複数のオシレーターで鳴らす必要があります。
そのためコード弾きに関しては少し遅延が発生してしまいます。
SY-1000は使用したことがないので詳細なつくりは把握しきれていませんが、同等のクオリティを想定して使用するのは難しいかもしれません。
ZOIAでの組み立て方次第でより精度の高いものが作れる可能性もあります。
また今後も研究を重ねていってみようと思います!
zoian (火曜日, 20 4月 2021 19:35)
ご返信ありがとうございました!倍音成分の複雑なギター等でそれぞれの弦の音を拾うポリフォニックを作るにはかなりハードルたかそうですね、、、、。ありがとうございました!今後も新たな投稿楽しみにしています!